北海道開拓の村旧小樽新聞社及び旧近藤染補改修事業
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2022.12.14
今回の開拓の村 旧近藤染舗・旧小樽新聞社の工事
内容について簡単におさらいします。
旧近藤染舗についてです。
◎下屋の屋根柾葺き替え
今回の屋根材は初めての試みということもあり、防数層を新しく設けました。
(:仮に屋根から雨漏りしても室内に水が漏れない仕組み)そして、葺き上りの写真がこちら
今回使用したのは北海道産ストローブ松をサーモッド処理(高温処理)した加工材です。
この処理をすることによって
・腐朽の原因となる成分が減少する→腐りにくい。
・反りなどの木が持つ変形を抑えることができる。
という効果があります。◎漆喰壁の補修
・グラスファイバーネット伏込みによる割れ防止
・ウォーターセラミック塗布による劣化防止
など現代的な工法も採用しております。◎基礎石の新設・擬石補修
建物の基礎石として札幌軟石が使用されていましたが、軟石特有の脆さや、凍結により軟石が内部から割れが入ったりと今後のことを考え、
既存寸法に合わせて、建物の重さにしっかり耐えられるコンクリート製のものを軟石模様に仕上げた基礎石を新たに据え付けました。◎正面看板の補修
看板の文字・半纏も劣化が進んで枠もかなり色あせていたので、
木製文字・半纏を新らに作製したり、各所埋木・塗装を行いました。
水抜けがよくなるように、住宅基礎に使用する通気パッキンで架台を少し浮かしています。その他にも、
外部では木柵新設、石畳・石階段の補修や下見板を張替えたりなど
各所の修繕を行っています。
建物内部では襖・障子張替え、土間のタタキ、畳の新設・張替え、漆喰壁塗替えを行います。
などなどボリューミーな工事でしたが4月から始まって11月にようやく工事が終わりを迎えました。
古い建物従来の形通りに直すのではなく、より長持ちするようにと
現代の技術・職人の工夫が各所に生きております。
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2022.11.19
近藤染舗
外壁の既存漆喰を剥がしていくと、我々の想像以上に下地が傷んでいる箇所も・・・。
今回左官工事をしていただいている中屋敷左官工業さんの協力により、「現代の名工」荒木富士男氏を現場に招き補修方法など名工の視点からアドバイスをいただきました。
工期が限られている中、協議しました。
土壁は一から施工すると仕上げを塗るまでの乾燥期間は長期間必要です。
土壁が補修不能なほどボロボロなところは木下地にてやり直しました。
1面の面積が大きいために土壁自体がはらんでしまったところは、柱にビスを打ち込みセメント入りの土にて補強。
これにより下地の食いつきをよくする効果があるためこのような方法で施工しました。
仕上げに向けて下塗りをしていき、仕上げていきます。
柾葺きがほぼ終わった状況。
3年前のこけら葺きとは違いサーモウッド処理した茶色の仕上がり。
上屋を解体して少しすると雨や日光でグレーに変化するので工事中のみ見ることができる光景です。
雨押えなどの役もの取り付け、その上にはガルバリウム鋼板を施工して屋根工事はほぼ完了です。
次回更新時に足場解体前の状況をお伝えします!
一方小樽新聞社
こちらも左官屋さんが大活躍。
ボロボロだった漆喰をどんどん仕上げていきます。
外壁の石の補修のサンプルです。
骨材の種類に応じて、様々な石材の補修が可能となります。
欠損部が大きい箇所の補修模型
ステンレスピン(ビス)+ステンレスワイヤーにて剥落防止を行います。
補修状況
天候にも左右されるので、思うように作業が進まず苦労していました。
完了したらほぼわからないですね。
まさに職人技・・・
現場にてワークショップも開催しました。
石の補修方法の説明、柾葺きの体験を一般の方にしていただきました。
来ていただいた皆さんありがとうございました!
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2022.07.14
柾が少しづつ張り上がります。
葺き足30mm(1寸)で張り上げるので時間が掛かります。
平場の部分は単純作業ですが、計算上1坪あたりに張る枚数は700枚以上。
中々気の遠くなる作業です。
山・谷の部分は特殊な形状の材料で施工しなければならないので中々悩みどころ。
今回は現場で加工しましたが、今後はこの部分の標準的な寸法を模索するのが課題です。
旧近藤染補漆喰補修
下地の土壁の劣化に応じて補修方法を検討しています。
土壁の損傷が激しいところは浸透プライマーで既存土壁を強化して、セメントと土を混合して土壁の補修を行います。
その上からグラスファイバーネットと下地処理材を施工します。
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2022.07.12
3年前の工事に引き続き、今回も開拓の村の工事に携わることとなりました。
当社の大工の技能が発揮できる現場となります。
今回は山﨑建設工業さん(施工)・アトリエアクさん(設計)との協業で進めていきます。
対象建物は、
旧小樽新聞社:RC造3階建て・延床面積374.2㎡
旧近藤染補 :木造2階建て・延床面積181.3㎡
の2棟です。村内マップ赤丸の建物が今回の対象建物です。
旧小樽新聞社
小樽市堺町に建てられた建物
外壁は軟石貼りで建てられた当初は木骨造でしたが、開拓の村にて移築再生されたときにはRC造で建てられました。
内部の壁・天井は漆喰ですが、かなり劣化が進んでいます。
今回の工事内容は屋根板金の葺き替え、内部漆喰の補修、外壁軟石の補修を主にしてその他多岐に渡る改修をします。
山﨑建設工業さんがメイン担当しております。
こちらは旧近藤染補
大正時代に旭川にて建てられた染物販売店舗兼住宅です。
こちらの工事は屋根の葺き替え・各所劣化木部の取り替え・外部漆喰の塗り替え・木製建具の補修などが対象です。
こちらは武部建設がメインで担当していきます。
どちらの工事も職人さんの技能が存分に生かされる仕事が盛りだくさんです。
小樽新聞社の外壁
かなり風化して剥落している部位もあります。内部の漆喰も漏水の影響もあり、ボロボロ
窓からの雨水浸入防止を行いつつ漆喰の補修を行います。
旧近藤染補も漆喰のヒビ割れ・剥離、木部の腐食、屋根の劣化など各所見られます。
小樽新聞社の屋根
既存の板金は錆びてきており、アーチ部の漏水もありました。
木下地を補修⇒ルーフィング張り替え⇒ガルバリウム鋼板を菱葺きでやり直します。
漏水の懸念があるところは水が上手く流れるよう納まりを検討しながらの作業です。
外壁の補修は脆弱部分ははつり取り、劣化度に応じて補修していきます。
欠損の深さに応じてアンカーピン+ステンワイヤーにて剥落防止などの措置を講じます。
中塗り、上塗りののち、サンダーなどで表面を削り、石のベース色に近づけます。
これから仕上げていき、擬石補修を完成させていきます。
近藤染補 目玉その1の屋根の柾の葺き替え
今回使う材料(柾材は道産ストローブ松)をサーモウッド処理したものを使用します。
新たな試みなので、工事範囲は下屋のみ。
また、2次防水措置として2重垂木の1段目のラインにタイベックを敷き込みます。
通気を確保しつつ、万が一の屋根材からの漏水に対処できる仕組みです。
屋根の葺き始め
サワラ材とは異なり、茶色い見た目。
サーモウッドは水と熱のみで加熱処理をして耐久力を高めた材料です。
今回は武部建設の大工で葺き上げます。
安定供給可能な道産材を使い、道内の職人での改修を可能とすることで北海道の伝統的建築物の保全を中長期的に取り組むことを目的としております。