大自然に囲まれ寄り添う、大空間が心地よい家
釧路湿原の自然風景を大きな窓から見渡しながら暮らすOさんご夫妻の住まい。以前は東京で暮らしていたご夫妻が終の住処を北海道に決めたのは、ご主人の仕事で3年間アメリカのボストンに暮らしていたときでした。近隣の家までの距離が適度に離れている開放感のある住宅地での暮らしの中で、日本に帰る時期が近づくにつれ「もう家と人が密集した東京では暮らせない」と考えるようになり、旅行で訪れたことのある北海道の広大な自然の中で暮らしたいと思うようになったそうです。
釧路湿原に囲まれた鶴居村に2000坪の土地を購入し、佐賀県に住む知人の建築家に基本プランを依頼。「朝から日没まで一日中、湿原とその手前に広がる牧場、そして庭の景色が楽しめる大きな窓がある開放的な住まいにしたかったので、実際にこの場所で一緒にまわりの風景を見てもらいました」とご主人。
木造で柱のない40畳の大空間LDKにしたいという希望から、構造は増田建築構造事務所(東京)、施工は武部建設が行うという日本縦断のコラボレーションでの家づくり。基本設計は九州、構造設計は東京で行われた大空間の住まいを北海道の木を使い、北国のビルダーが実施設計と施工したプロジェクトとなりました。
屋根の傾斜を生かした高さとその屋根を支持する格子組の天井によって、開放感あふれる住まいが完成しました。
竣工後のO邸で行われた見学会では、伝統工法である格子組の考え方を基盤とした小屋組や、柱がなく吹き抜けになった40畳の大空間のLDKに驚きと感嘆の声が上がり、訪れた人々は目を見張り関心する姿が。
その後、場所を変えて行われたセミナーでは、このコラボレーションに関わった人々の熱意と苦労を知り、北海道の家づくりの新たな一歩となるであろうこのプロジェクトの成功が、未来へつながる幕開けとなることを感じ拍手が送られました。
北海道の気候風土を熟知した確かな技術を持つ大工がつくる北国の住まいに、さらに選択肢が広がった試みです。