Story 物語

南幌町・Tさん宅
夫婦、子ども1人

個性的な家が多く立ち並ぶ南幌町のみどり野きた住まいるヴィレッジの中で、道産カラマツの外壁が目を引くTさんのお宅。古材や無垢材を使った家づくりに長けた武部建設と、環境負荷を抑えた設計で永く愛される住まいづくりを目指すアトリエmomoの櫻井百子さんがタッグを組んだ5棟目の住まいです。

カーポートと物置を一体化させ、統一感を持たせた外観。屋根は2寸の片流れ屋根

左:外壁は木酢液を染み込ませた道産カラマツと無塗装の板を交互に張り込み、縦ストライプのツートンカラーに
右:玄関横に設けたシューズコーナーと収納棚。シンプルなつくりだからこそ、工夫次第でどのようにも使える

札幌でマンション暮らしだったTさんご一家。都会暮らしがしっくりこないと感じ、いずれは環境の良いところに好きな家を建てたいと願っていました。そんな折、見つけたのがみどり野きた住まいるヴィレッジの自然豊かな土地。そこで見かけたのが武部建設とアトリエmomoがコラボレートした住宅でした。偶然にもアトリエmomoの体験ハウスに宿泊したことがあったTさんは、建物がとても好みだったことを思い出したといいます。不思議な縁に導かれて、両者に家づくりをお願いすることになりました。

左:玄関ドアを開けるとこの景色。入ってすぐダイニングという間取りに誰もが驚くそう。家族の顔がすぐ見られる幸せな空間
右:ユーティリティ側のウッドデッキは物干し兼用。目隠しと風除けのためのルーバーで囲いプライベートスペースに

左奥の扉が玄関。継ぎ跡やノミ跡が残るエンジュの古材を使った柱に、古いベンチがよく似合う

完成した住宅は奥行き4間の空間で玄関ホールや廊下などは排除し、コンパクトな動線で機能的な間取りに。一方、建物の横幅いっぱいにウッドデッキを設け、吹き抜け窓でつなげることで、LDKは開放感に満ちています。内部は梁や天井を現しにし、木の風合いを存分に感じられる空間に。リビングの柱には歴史を感じるエンジュの古材、カラマツ三層パネルで組んだ階段の踏み板にはナラ、手すりには貴重なカツラ、床には道産カラマツと、武部建設ならではの多彩な樹種と古材を使い、大工さんの手仕事が見て取れる設計になっています。

LDKは一部を吹き抜けにし、天井まで窓を設けウッドデッキにつなげたことで、面積以上の広さを感じる

使いやすさ重視のキッチン。収納はあえてオープンにし、物を取り出しやすくしまいやすいよう造作

予定外だったのは薪ストーブ。最初は乗り気ではなかったTさんですが、実際に見てその暖かさと火のある暮らしを体験し導入することに。今では1番のお気に入りとなっています。「ここで暮らすようになってから、自分たちの生活がこの土地と家にしっくりとなじむんです。休日には近隣の道の駅に野菜を買いに行ったり、温泉に出かけたり。ほとんど札幌には行かなくなりました」と語る奥さん。冬は薪ストーブの火を囲み、家族で何もしない穏やかな時間を過ごすのが何よりの幸せとか。

左:大工さんが一からつくり上げたカラマツパネルの木製階段。段板と桁が美しく端正に組み上げられているのが匠の技
右:2階から1階を見下ろすと、立派な梁と吹き抜けの窓。木製階段をトントンと上る子どもの足音が響く

左:2階は奥に寝室、手前は仕切れば子ども部屋に。道産カラマツの無垢フローリングの木目と、現しにした天井がいい
右:2階に設けたTさんの仕事部屋はコンパクトで機能的。階下に家族の気配を感じながら仕事もはかどる

念願の庭は、奥さんの両親が見事な畑に整えてくれたそう。「息子も植物の魅力に目覚めて、朝起きたら庭に花が咲いているか見に行き、水をやるのが日課になりました」。木に囲まれ、ゆるやかに流れる時間が、Tさんご一家にフィットしている様子が言葉の端々から伝わります。これから訪れるいくつもの季節を、ともに歩んでいく住まいが出来上がりました。

庭からの眺め。草木が生い茂る風景の中に溶け込むようなウッドデッキと外壁

奥行きが一間ある広いウッドデッキには、風除けのルーバーを立て、柱や梁とともにウチとソトをつなぐ

Replan北海道vol.142掲載