ローマ・ローマ・ローマ・『ローマ展』/ TOCCARE IL TEMPO ・時に触れる

    イタリアローマ浸け、6泊7日間

1.
動機


*

1976年今から30年前、最初の海外旅行はメキシコだった。
高校3年生のとき、ガウディを何かの記事で見たときから、
スペインカタロニアの首都バルセロナが行ってみたい憧れの地だった。
当時、円は1$=230円くらい。
スペインまでは、50万は必要だったと思う。
それでスペインは断念。
飛行機が安い同じスペイン語圏のメキシコになった。
そのとき以来、イタリアも片隅にはあって気にはなっていたのです。

大学に入って建築を学ぶようになって、
発信されてくる情報はますますイタリアで、
イタリアの雑誌「domus」
は、かっこ良くて、
卒業するまでに一番の海外のお気に入りの建築家は、
イタリア人カルロ・スカルパになっていた。
そんな思いから30年。
安田侃『ローマ展』がきっかけを与えてくれました。


*



会場入り口、ローマでは何度も通ったメインストリートに面してます。(オープンバス2階から)
平日だったけど、けっこう賑わってました。


2.

現地で


*



『ローマ展』へ行ったのは、12月2日(日)4日目の中日午後。
バチカン1日半、パンテオン1日半、
その日も朝からコロッセオ→パラティーの丘→フォロロマーノと、
どっぷり濃厚な古典と遺跡に浸り続けて、
驚きと感動の連続でごちゃ混ぜになっていた頭が整理着かず、いささか消化不良気味。
そんな状況下で飛び込んできた安田侃の彫刻たちは、
アルテで見るよりも他のどこで見たよりも、
新鮮で身近でモダンで、やさしく安心できるものでした。
そしてなによりもロケーションにぴったりハマっている、
場所(サイト)と一体となった全体が、作品になっている。
まさに未体験の感動、すばらしかったです。



作品配置図、29番側がベネチア広場



 
ベネチア広場を通り抜ける、やはりオープンバスの2階から撮った会場遠景。
安田侃作品が、こんな感じでローマにとけ込んでいて、
写真家並木さん(結ホールで写真展開催中)に聞いてはいたけれど はじめは気がつきませんでした。
コロッセオ→パラティーノの丘→フォロロマーノ→カンピドリオ広場からベベチア広場を抜けて、
遠くに安田侃作品Kikeを発見した時は、感動的でした。
通りでは、ストリートミュージシャンがフォルクローレを奏でていて、
南米音楽のそれは、日曜日のローマの昼下がりにぴったりでした。



 
地上階から地階といえるような下階を望んだところ、4作品が見える。
右手が、ヴェチア広場側、2階屋上で反射して光っているのが、右写真ホワイトブロンズのIshinki。
到着したとき、侃さんはこの彫刻を磨いていました。




 
会場構成は、複雑で把握しずらいけど、こんな様子です。
雨に濡れて、つややかに。




上階の開口から



 
写真ではよく見ないとわからない、遺跡の残骸と混じっていて、渾然と。



 
左ブロンズ作品Mezameは、見落とすかもしれない。
向こうの地上にTensei&Tenmoku(右写真)
その右向こうがベネチア広場、フォルクローレが響いてくる。



 

地階の建物に挟まれたストリート。
左、作品配置図2番Ishinkiと右、作品配置図6番Chijin。
個室にも入ったIshinkiの向こうに、Fubukiと例のKimonがわずかに顔を出す。




 
通りの雰囲気。彫刻の配置が絶妙でその場の空気がほっと和む。



 
遺跡の中にまるで古代からあるような現代的曲線。




3作品を見通す、う〜ん、いいですねえ。




これまた3作品を見通す。
このように、彫刻たちも遺跡と一緒に、お互いに絡んでくる。



 
黒のブロンズ作品が、あえて無照明で置かれている。
暗闇の中でのその存在感が、まるで生命体のような感じを受ける。



 

あまりにも場にハマっているその存在感を問うと、
やはり、ほとんどすべてをロケーションを確認しながら彫り直したと言ってました。
 


 
左は、私にとっては初めて出会う作品も。
雨で艶やかになったTenshoが色っぽい。




下から見上げた象徴的アングル。作品配置図25番Kimon、ちらっと26番Myoumuも。



 
屋上のMyoumuとKimonが絡んで、老若男女の見学者たち。



 
さらに屋上奥の道路側に、これまた象徴的なTensenとHitotsu Wa Futatsuが絡む。
そうなんですよ、
こうやって写真を改めて見ながら気がつくのは、
彫刻たちどうしが絡み、遺跡に絡み、人々に絡み、ネコたちにも絡み、
そして場所に絡み、ローマという都市に絡んで昇華していくって感じです。



 
それをオープンバス通過中に道路から。
このように、エリア外からも垣間見える彫刻たち。




このミュージアム、トイレもそうだったけど、
よく見ると様々に現代的デザインが、古典に対して主役になることなく、
施されている。
古典と現代の融合、これって、当社のコンセプトだよなあ



3.
愛すべきかな、侃さん

*



「ここには、野良猫がいっぱいいてねえ」といいながら、ネコにもやさしく話しかける侃さん。



 
そしておりましたよ、侃さん。
カメラを向けると
自ら知り尽くした作品を愛おしみ、その作品に包み込まれるように、ポーズをとってくれました。
その行為が不思議に自然で、ものすごっくチャーミングだった。
愛すべきかな、侃さん!!




こんなこともしてくれたり・・・




2センチ角くらいの小さい穴、2つある一つの穴に指を突っ込みながら、
遠い未来、この彫刻がどこからか発見されて、この穴は何だ?となったときに、
「この穴は、虫が喰った穴なんだ。石を喰う人間という虫が。」
ということになるのです、と。
本当に信じてしまうくらいに、真顔で話してました。




この日は雨がぱらついていて、へこんだところに溜まった水が気になるらしく、
手でさらって掻きだす。
このあたり、作家としてのこだわりがあるらしい。
後ろには、ネコたち。


*



記念に一緒に




4.
結び


*


(パンフレットには、イタリアのそうそうたる企業がスポンサーとして名を連ねる


*


いやあ〜、すばらしかった 。

到着してすぐに思ったのは、同じ日本人として実に癒されるということが第一。
次に古典と遺跡にどっぷりと浸りすぎた身体に、
あの優しい曲線が、現代人としてさらに癒されるというのが、その次。
そして、あまりにもハマりすぎたその場の設定と彫刻のヴォリュームに、
感心して問うた答えが、
「そう、ほとんどすべてを新たに彫り直した。」と。
そうでしょう、そうでなければあんなにロケーションと一体になりませんよね。

(『ローマ展』は好評につき、会期が3月まで延長されたそうです。)


市民は、
やさしくて親切でつまりハートがあって、
ピザもパスタもリゾットもおいしくて、
市場には新鮮な食材が豊富にあって、
ローマ、最高っす!


(次回から、ローマ紀行連載します。)


*

そんなローマの中心で
彫刻家『安田侃』の作品をカメラに焼き付けてきた、
並木博夫の写真展が、
「結ホール」で開催中です。

このレポートをお読みいただき、
少しでも興味を抱いていただいた方は、
ぜひご覧いただきたく、
来場、お待ちしております。


*

当ホームページ・安田侃サイト
http://takebe.replanweb.net/bunka/machi/kan/0605kan/kan01.htm



bunka top

Home