シリーズ・感動本




『憲法なんて知らないよ』

池澤夏樹(著)・
集英社文庫 500円

2005年5月5日・読了



amazon book レビュー
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僕の生まれは、1953年です。
いわゆるミッドセンチュリーのアメリカン文化にどっぷりと浸かって、
幼少期を育ちました。
「戦後民主主義」もバッチリと刷り込まれてきました。
そんな僕たちに、
小学校3・4年の担任のK先生は、
たぶん全員が和式の便器しか体験したことがなかった中で、
いかに洋風水洗便器がすばらしいか、
(ウォッシュレットなんて想像外)
を説き、
さらに小学校5・6年の担任の教育大をでて間もないS先生は、
社会の授業で、
「これは世界に誇る憲法だから・・」
といって、
「言葉は小学生にとってはむずかしいかもしれないけど、いずれ役に立つときが来るから・・・」
といって、
「第2章 戦争の放棄・第9条」を全員が丸暗唱させられました。
まるでかけ算の九九を暗唱させられるように、
ひとりずつ起立して、
「日本国民は正義と秩序を・・・」
と始めるわけです。
当時三笠市立岡山小学校の我がクラスは、26名いました。
みんな覚えているのかなあ。
今度あったとき、聞いてみよう。
(S先生はまた、着任早々陸上部をつくり、
走ったり跳んだりする競技の楽しさを、まだ小学生の我々に教えてくれました。)

*

第2章 戦争の放棄

 第9条 日本国民は正義と秩序を基調とする、国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。

 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

全く何も見ないで書いたけど、句読点の打ち方には自信はない。

*

最近憲法改正論議がにぎやかです。
それ以前は、僕はどちらかというと改正派でした。
憲法改正というと、それはほとんど「第2章第9条」を指します。
どこからどう読もうと拡大解釈している自衛隊という「その他の戦力」が、
存在しています。
そんなあやふやさを、はっきりさせた方がいいのでは、
と一時思っていました。
*
ところがある日、
ふと、そういえば第9条を暗記させられたよなあ。
と思い当たったのでした。
あれからもう30年以上は過ぎていました。
試しに、口ずさんでみると思いの外、すらすらと出てくるではありませんか。
すばらしい!!
*
S先生の思いが、ちゃんとつながっているんだ!
*
それ以降、考えが変わりました。
「やっぱり、どう考えてもこんないい条文はないよなあ」
という思いです。
他の条文は改正してもいいから、
「第2章第9条」だけは一言一句、
絶対に代えて欲しくないないという思いです。
それは、憲法改正論議がにぎやかになればなるほど、
強い思いになってきています。

そこに、池澤訳「日本国憲法」が登場したのです。
英語の原文に立ち返って、
それを彼のセンスで日本語に訳し直す、
という、なんたるアイデア。

彼は、「日本国民は・・」を「私たち日本人は・・」で始める。
実に何ともいい響き。
本当に何の抵抗もなく、すんなりと入ってくる。
前文なんか、本当に原文が英語だとは思えない自然さ。
まことに易しい優しい、誰もが理解できる言葉なのです。
あまりにも簡単に全条文を読み終え、内容もあっさりとわかっちゃうのです。

ほんとうにこんな憲法だったら、
多少おいしいものが食べられなくても、
多少きれいな洋服が着られなくても、
多少住宅が狭かったり暑かったり寒かったりしても、
それくらいはがまんして、
たとえアメリカにメンコクナイ奴だ、と思われても、
「私たち日本人は」
みんな絶対に支持しちゃうと思う。
*
新訳「日本の憲法」抜粋

第二章 戦争の放棄

 第九条
@この世界ぜんたいに正義と秩序をもとにした平和がもたらされることを心から願って、われわれ日本人は、国として戦争をすることを永遠に放棄する。国の間の争いを武力による脅しや武力攻撃によって解決することは認めない。

Aこの決意を実現するために、陸軍や海軍、空軍、その他(ほか)の戦力を持つことはぜったいにしない。国というものには戦争をする権利はない。

原典は縦書きで、すべての漢字にふりがながついてます。

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